この記事で分かること
結論から書きます。生成AI(文章などを自動で作るAI)で中途採用の求人票の初稿を作るときは、AIに頼む前の準備と、AIが出した原稿を人が確認する体制の2つが成果を左右します。生成AIは求人票のドラフトを短時間で作れる一方で、「思ったような文章が出てこない」「ありきたりな内容になる」という壁にぶつかる担当者も多いとされています 1。
この記事を読むと、次のことができるようになります。
- 自社の魅力と必須要件を、AIに渡せる形で書き出す
- AIへの指示文(プロンプト)を組み立てて、初稿を作る
- 初稿を「法令・表現」「事実」「選考との整合」の3つの観点で確認する
- まず1職種で試し、振り返って改善する
前提:対象の業務と用意するもの
対象は、中途採用の求人票(求人原稿)の初稿づくりです。最終的に掲載する文面は、人が確認して仕上げる前提で進めます。
用意するものは次のとおりです。
- 生成AIツール:汎用の生成AIとして、ChatGPTやGoogleのGeminiなどが挙げられています 7。求人媒体に組み込まれた専用ツールを使う方法もあります 6。
- 既存資料:過去の求人票、社内の職務記述書(担当業務や求める能力をまとめた文書)、自社の公式サイトや採用ページ 3, 7
- 募集職種について、現場の責任者や面接官と話せる時間
個人情報・機密情報の注意: 過去の求人票や職務記述書をAIに貼り付ける前に、在籍社員や過去の応募者の氏名など、個人が特定できる情報が含まれていないかを確認してください。未公開の事業計画や給与体系など社外に出せない情報も、削るか一般的な表現に置き換えてから入力します。入力した内容がどのように扱われるかは利用する製品によって異なるため、社内のルールや各サービスの利用条件を事前に確認してください。
自社の魅力と必須要件を書き出せるようにする
AIの出力の質は、最初に入力する内容に大きく左右されます 7。指示を出す前に、魅力と要件を自分たちの言葉で整理します。
魅力を書き出す
仕事内容や条件だけでなく、応募者に伝えたい魅力ややりがいを自分の言葉で書き出すことが、生成結果を良くするポイントだとされています 1。
手順
- 募集職種の仕事内容と勤務条件を箇条書きにする。
- 「この仕事ならではのやりがい」を1〜3行で書く。
- 「会社として培ってきた強み(ノウハウや信頼など)」を書く。
- 「働きやすさ(勤務時間や両立のしやすさなど)」を書く。
- 書いた内容が他社にもそのまま当てはまらないかを読み直し、当てはまる場合は自社固有の事実(年数、取り組み内容など)に置き換える。
記入例(出典の例を参考にした形式) 1
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| やりがい | ただのテレアポではなく、企業の採用課題を解決する「コンサルティングの入口」を担う |
| 強み | 93年の歴史で培ったノウハウや信頼がある |
| 働きやすさ | 短時間勤務なので、Wワークや家庭との両立がしやすい |
必須要件を4つに分ける
求める要件をそのまま並べると、求人票に経験年数、業界経験、使用ツール、マネジメント経験などが並び、面接では書かれていない条件まで加わって「何となく足りない」と見送られる、という状況が起こり得ます 5。そこで、要件を「初日必須」「短期立ち上がり」「育成可能」「尚可」の4つに分けます 5。
手順
- 今の求人票に書いている必須要件を、すべて書き出す 5。
- 要件ごとに、次の問いに答える 5。
- どの担当業務に必要か
- 入社時点で必要か
- 短期間で身につけられればよいか
- 自社の育成やオンボーディング(入社後の受け入れ・立ち上げ支援)で補えるか
- なくても役割を果たせるか
- 答えに応じて、4つのどれかに分類する。
- 「初日必須」に入れた要件について、なぜ必要かを1行で説明できるかを確認する。説明できない場合は、過去の採用慣行が残っているだけの可能性があります 5。
判断の例: 出典では、SaaS業界経験を必須にするなら「なぜ他業界の法人営業経験では難しいのか」を説明できる必要がある、と例示されています 5。一方で、その経験がなければ業務を任せられないのであれば、初日必須として残すべきとされています 5。目的は一律に条件を緩めることではなく、一つずつ理由を確認することです 5。

出典: 中途採用が決まらないとき、「厳選採用」の前に採用要件を4つに分ける|ゆうさん/人事
AIに指示を出して初稿を作る
汎用の生成AIを使う場合
指示文に「役割」と「条件」を入れるだけで、複雑な書き方は不要とされています 1。
手順
- AIに役割を与える。例:「求人広告を何百本も手掛けてきたプロの採用コピーライター」 1
- ターゲット像(経験や志向)を書く 1。
- 前の節で整理した必須要件・歓迎要件を貼り付ける 1。
- 勤務条件(勤務地、勤務時間、日数、給与)を書く 1。
- 書き出した魅力(アピールポイント)を貼り付ける 1。
- 送信して初稿を受け取る。
- 気になる箇所に修正指示を出して書き直してもらう。
避けたい指示(NG例) 7
「営業職の求人原稿を、魅力的な感じで書いてください。若手が応募したくなるような内容でお願いします。」
この例は内容があいまいで、自社の情報も含まれていません。また「若手」という言い方は、後述する年齢に関する表現のチェックでも引っかかる可能性があります。
指示文の例(出典の型をもとに構成) 1
# 命令書
あなたは、求人広告を何百本も手掛けてきたプロの採用コピーライターです。
以下の情報を基に、ターゲットの心に響く求人票の原稿を作成してください。
# ターゲット
テレアポ経験を活かして、よりやりがいのある仕事を探している方。
Wワークや家庭と両立しながら働きたい方。
# 必須要件
・テレアポ経験
・基本的なPCスキル
# 歓迎要件
・BtoBでの営業経験
・広告業界での経験
# 勤務条件
勤務地/勤務時間/勤務日数/給与(自社の実際の条件を記入)
# 伝えたい魅力
(前の節で書き出した内容を貼り付け)
補助的な使い方: 職種について理解が浅い場合は、先にAIに仕事内容や求められるスキル、業界のトレンドを調べてまとめさせ、その結果を原稿づくりに活かす方法もあります 1, 6。例:「飲食店の店長候補の仕事内容、求められるスキルと人物像、業界のトレンドを調査してまとめてください。」 6。ただし、調査結果にも誤りが含まれる可能性があるため、自社の実態と照らして使ってください。
求人作成の専用ツールを使う場合
求人媒体に生成AIが組み込まれている場合もあります 6。例として、ビズリーチの「求人自動作成機能」は次の流れで使うと説明されています 3。手順はツールごとに異なります。
- 人材イメージ(事業・業務内容や求める能力・スキル・経験を箇条書き)と、参照URL(公式サイトや採用ページなど)を入力する 3。
- 提案された内容から、募集理由・背景、具体的な業務内容、ポジションの魅力を選ぶ(複数選択可) 3。
- AIが仕事内容、応募資格、ポジション名、職種を自動生成して提案する。必要に応じて修正指示を出したり、参照URLを追加して再生成したりする 3。
- 提案内容に修正指示や選択を行い、保存する 3。
専用ツールを使う場合でも、手順1の人材イメージには、前の節で4つに分けた要件を使うと入力内容がぶれにくくなります。
初稿を確認する:3つの観点
AIが生成した文章はそのまま使わず、人の目で確認する必要があります 6。次の3つの観点で、順番に確認してください。
観点1:法令・表現に問題がないか
AIは過去の文章データから学習しているため、無意識の偏見や差別的なニュアンスを含む表現を出力する可能性があります 6。
| 表現の例 | 想定されるリスク |
|---|---|
| 「女性限定の募集」 | 男女雇用機会均等法に抵触の恐れ 6 |
| 「20代歓迎!」 | 年齢制限禁止義務の違反の恐れ 6 |
| 「絶対に稼げます!」 | 誇大広告に該当する可能性 6 |
| 「若い女性にぴったりの職場!」 | 年齢・性別に対する偏見と取られる恐れ 6 |
| 「外国人不可」 | 差別的表現とみなされ、炎上や法的トラブルのリスク 6 |
手順
- 性別を限定・示唆する言葉がないか探す。
- 年齢や世代を示す言葉(「20代」「若い」など)がないか探す。
- 「絶対」「必ず」など、結果を保証する言葉がないか探す。
- 国籍や属性で応募者を排除する表現がないか探す。
- 迷う表現は削除するか、仕事内容や必要なスキルに基づく表現に置き換える。判断に迷う場合は、専門家や関係機関に確認してください。
観点2:事実と違う内容がないか
AIの出力には、誤った情報や事実と異なる内容が含まれるリスクがあります 6。
手順
- 給与、勤務時間、勤務地、勤務日数を、社内の正式な条件と1項目ずつ照合する。
- 仕事内容が、実際の業務と一致しているかを現場の責任者に確認する。
- 会社の歴史、実績、制度など、自社に関する記述が正しいかを確認する。
- 入力していない情報(制度や数字など)が書き加えられていないかを確認し、あれば削除する。
- ありきたりな表現になり、自社独自の魅力が抜けていないかを見直す 1, 6。抜けていれば、書き出しておいた魅力の文言を戻す。
観点3:選考の基準と一致しているか
求人票だけを直しても採用は変わらず、選考の基準や候補者への伝え方にも反映する必要があるとされています 5。
手順(確認項目) 5
- 求人票の必須要件と、面接官が実際に見ている要件が一致しているかを確認する。
- 「尚可」と書いた要件を、面接で実質的な必須にしていないかを確認する。
- 候補者に伝える仕事内容と、選考で確認する内容が一致しているかを確認する。
- 見送り理由を、どの要件が足りなかったのかで説明できるかを確認する。
- 「要件が足りない」ことと「任せたい役割と合わない」ことを分けて考えているかを確認する。
「カルチャーが違う」「もう少し上の人がほしい」といった言葉だけでは、次の候補者をどう評価するかが決まりません 5。面接官と求人票の内容を突き合わせる場を、初稿の確認と同時に設けると、ずれに気づきやすくなります。
確認シートの例
| 確認項目 | 担当 | 結果 |
|---|---|---|
| 性別・年齢・属性に関する表現 | 作成者 | 問題なし/修正 |
| 給与・勤務条件の照合 | 事務担当 | 一致/不一致 |
| 仕事内容の正確さ | 現場責任者 | 一致/修正 |
| 必須要件と面接の評価項目の一致 | 面接官 | 一致/要すり合わせ |
うまくいかない場面と対処
| 状況 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| どの会社にも当てはまる文章になる | 魅力の入力が少ない、指示があいまい | 魅力を自分の言葉で書き出して指示に入れる 1。NG例のような曖昧な指示を避ける 7 |
| 必須要件が多すぎて応募が集まりにくそう | 要件が分類されないまま並んでいる | 4つの分類に分け、初日必須の理由を確認する 5 |
| 入力していない制度や数字が書かれている | AIによる誤情報 | 観点2の手順で照合し、削除する 6 |
| 問題になりうる表現が混じる | 学習データの偏りの影響 | 観点1の表を使ってチェックする 6 |
| 求人票は整ったが、面接で見送りが続く | 求人票と面接の基準がずれている | 観点3の確認項目で面接官とすり合わせる 5 |
AIは文章のたたき台を作るのは得意でも、自社の事実や採用方針を判断してくれるわけではありません。何を必須とするか、何を伝えるかは、人が決める部分として残ります。
1職種で小さく試して振り返る
全職種の採用基準を一度に直す必要はなく、まずは募集中の1職種で試すことが勧められています 5。
Plan(計画)
Do(実行)
- 魅力と要件を入れた指示文でAIに初稿を作らせる。
- 3つの観点で確認し、修正して掲載する。
Check(確認)
- 直近の見送り理由を、合意した要件に当てはめて説明できるか確認する 5。
- 候補者に伝えた仕事内容と、求めた要件が対応しているか確認する 5。
- 初稿作成から掲載までにかかった時間や、修正が必要だった箇所を記録する。
Act(改善)
- 修正が多かった箇所(例:魅力の書き方、要件の表現)を、次回の指示文や準備シートに反映する。
- うまくいった指示文と確認シートを社内の型として保存し、次の職種に広げる。
AIを使って求人原稿を作成した企業で、応募数の増加や作成工数の削減といった成果が見られたという報告もあります 7。ただし、自社で同じ効果が出るかは、入力する情報の質と確認体制によって変わります。記録を残し、1職種ずつ確かめながら進めてください。


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