米上院でCLARITY法案のクローチャー採決が不成立となった翌日、暗号資産業界の視線は下院での関連法案審議や市場資金の動きに移っています。本記事では海外の一次ソースを中心に、投資家・ビジネスパーソンが押さえておくべき5つのニュースを一言コメントとともにご紹介します。
1. CLARITY法案、上院クローチャー採決で否決|共和党3議員が造反し49対50で不成立
米上院は9月15日午後、暗号資産の市場構造を定めるCLARITY法案(H.R.3633)のクローチャー(討論終結)採決を行い、賛成49・反対50で必要な60票に届かず否決されました。共和党からはスーザン・コリンズ議員、ジョシュ・ホーリー議員、ジェリー・モラン議員の3人が造反した一方、法案交渉に加わってきたギリブランド議員やウォーナー議員ら民主党議員も軒並み反対票を投じました。採決直前にはティム・スコット議員側と民主党の間で倫理規定を巡る最終協議が決裂しており、今回の否決で2026年内の上院での市場構造法制化はほぼ絶たれた形です。採決を控えたビットコインは79,500ドル台から77,400ドル前後まで軟化していました。
情報源: CoinDesk – Live updates: Bitcoin slides from nearly $80,000 as Senate votes on Clarity Act
💡 活用の一言: 上院での市場構造法制化が当面止まったことで、取引所・DeFiプロジェクトは既存のSEC・CFTCの執行方針を前提とした対応が続く可能性が高く、次の見直し機会は次期議会以降になる点を織り込んで事業計画を見直す価値がありそうです。
2. 下院金融サービス委員会、戦略ビットコイン準備金法案「ARMA」を9月16日に採決へ|20年間の売却禁止を法制化
米下院金融サービス委員会は9月16日、財務省管理の戦略ビットコイン準備金を法制化する「American Reserve Modernization Act(ARMA、H.R.8957)」の委員会採決を行います。共和党のニック・ベジック議員が提出し民主党のジャレッド・ゴールデン議員を含む20人超が共同提案者となっている本法案は、犯罪・民事没収で連邦政府が既に保有するビットコインを対象に20年間の売却・スワップ禁止を義務付け、四半期ごとの第三者監査による準備金証明も求めます。新規の市場買い増しは行わない設計のため、政府が新たな買い手として市場に参入する形にはなりませんが、可決されれば2025年3月の大統領令に基づく準備金の枠組みが初めて法律として固定されることになります。
💡 活用の一言: 委員会採決はあくまで法制化への一歩に過ぎず、本会議・上院審議が残っている段階のため、可決報道だけで供給インパクトを過大評価せず、その後の審議日程を継続してウォッチする姿勢が重要です。
3. ビットコインETF、9月14日は1.6億ドルの純流入|4営業日続いた流出局面が一旦反転
米国上場のビットコイン現物ETFは9月14日、1億6,000万ドルの純流入を記録しました。ブラックロックのIBITが1億3,400万ドル、フィデリティのFBTCが5,333万ドルの流入となった一方、アークのARKBは4,195万ドルの流出となっています。9月8日から11日にかけては4営業日で合計4億6,270万ドルの純流出となり、その週の木曜には2億8,270万ドルという7月以来最大級の単日流出を記録していただけに、直近の反転は資金フローの潮目を占う材料として注目されます。
情報源: KuCoin News – Bitcoin spot ETFs see $160M net inflow, with BlackRock's IBIT leading at $134M
💡 活用の一言: 単日の流入転換だけで基調転換と判断するのは早計なため、CLARITY法案否決やFOMCの結果を受けて今後数日の資金フローがどちらに振れるかを合わせて確認しておきたいところです。
4. SWIFTのトークン化預金基盤、中東・東南アジアへ実取引を拡大|CitiがFAB・OCBCと初の送金完了
決済ネットワークのSWIFTが構築したブロックチェーン基盤「Swift Shared Ledger」上で、米シティグループが9月2日、アラブ首長国連邦のFirst Abu Dhabi Bank(FAB)、シンガポールのOversea-Chinese Banking Corporation(OCBC)との間で、それぞれ中東・東南アジア地域で初となるトークン化預金によるドル建てクロスボーダー送金を完了しました。同月中にはDBS・UOBともシティの同様の取引が予定されており、2026年7月から12月までの実証実験の枠内で参加行を順次広げている形です。トークン化預金は銀行のバランスシート上に残る預金であるためステーブルコインと異なり預金保険の対象となる点が特徴で、週末・時間外でも数分で決済が完了する点が実証されています。
情報源: FinanceX Magazine – Citi moves tokenised deposits on Swift ledger with FAB and OCBC
💡 活用の一言: 銀行発行のトークン化預金がステーブルコインの対抗軸として実運用段階に入りつつあるため、越境決済コストや流動性管理を検討する際は、ステーブルコインとの選択肢比較にSWIFT参加行の拡大状況も加えておく価値があります。
5. EUサイバーレジリエンス法、暗号資産ウォレットに24時間以内の脆弱性通報義務|9月11日発効
EUのサイバーレジリエンス法(CRA)第14条に基づくインシデント報告義務が9月11日に発効し、ハードウェアウォレット・ウォレットソフトウェアを提供する事業者は、悪用が確認された脆弱性についてEUのサイバーセキュリティ機関ENISAおよび各国CSIRTへ24時間以内に予備通報を行うことが義務付けられました。72時間以内の詳細報告、深刻なインシデントでは14日または1か月以内の最終報告も求められ、違反時の制裁金は最大1,500万ユーロまたは全世界売上高の2.5%のいずれか高い方とされています(小規模・零細事業者は制裁金の対象外)。セキュリティ・バイ・デザインやCEマーキングなど、より広範な義務の適用は2027年12月11日からとなります。
情報源: Crypto Briefing – EU mandates 24-hour reporting for crypto wallet vulnerability reporting
💡 活用の一言: EU域内でウォレット製品を提供・販売する事業者は、インシデント対応体制とENISA・CSIRTへの報告フローが実際に24時間以内で回るかを今のうちに検証し、日本国内向け製品への展開時にも同水準の体制を準備しておく価値があります。
まとめ
今回取り上げた5件は、米国の立法プロセス(CLARITY法案の否決とARMAの下院審議)、市場資金の動き(ビットコインETFの流入反転)、銀行主導のインフラ拡大(SWIFTトークン化預金)、EUのセキュリティ規制(サイバーレジリエンス法)と、暗号資産を取り巻く動きが政治・市場・インフラ・規制の複数レイヤーで同時進行していることを示しています。特にCLARITY法案の否決は今後の米国内規制環境の先行きを左右する材料であり、ARMAの委員会採決の行方と合わせて注視が必要です。
本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘を意図するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
本記事は2026年9月16日時点の情報をもとに作成しています。最新情報は各引用元サイトをご確認ください。

コメント