暗号資産市場は価格変動だけでなく、規制動向や企業の参入・提携など、押さえておくべきニュースが日々更新されています。本記事では、海外(英語圏)の一次情報・公式発表を中心にピックアップし、投資家・ビジネスパーソンが押さえておくべきポイントを一言コメントとともにご紹介します。
1. SEC「クリプトの守護者」ハスター・パース委員が10月2日付で退任へ|後任不在で規制はどう変わる
SEC(米証券取引委員会)のハスター・パース委員は2026年9月25日、10月2日付での退任を発表しました。8年以上在任し、11月からリージェント大学ロースクールの准教授に転じます。任期自体は2025年6月に満了していましたが、後任が決まるまでのホールドオーバー期間として在任を続けていました。パース氏はセルフカストディ(自己管理)を基本的権利として一貫して擁護し、2025年1月発足のSEC暗号資産タスクフォースの立ち上げにも関わった、委員会内で唯一明確に暗号資産寄りの立場を取ってきた人物です。ホワイトハウスは後任を指名しておらず、上院の承認手続きには通常半年から1年を要するため、SECはアトキンス委員長とウエダ委員の2名体制で2027年の大半を過ごす可能性があります。
情報源: tftc.io
💡 活用の一言: SEC内で唯一異論を唱えてきた委員が抜けることで、エンフォースメントやルール制定が反対意見なしに進みやすくなる点は、規制リスクを注視する上で覚えておきたいポイントです。
2. CLARITY法案、上院採決不成立から2週間|後ろ盾を失った米暗号資産の市場構造規制は今どうなっているのか
暗号資産の市場構造を定めるCLARITY法案は、2026年9月15日の上院採決で49対50となり、可決に必要な60票に届かず不成立に終わりました。原因は証券法の解釈対立ではなく、大統領の暗号資産関連の利益相反防止規定が不十分だとする民主党の反発と、地方銀行がステーブルコインの利回り提供条項(発効から18か月で失効する「サーキットブレーカー」条項など)に反発したことにあります。法案提出者側が民主党の要求を受けて126か所も条文を修正したにもかかわらず、賛成した民主党議員はゼロでした。法律が存在しない現状では、SECとCFTCが2026年3月に共同で出した解釈通知(ビットコイン・イーサ含む18資産を商品先物取引法上の「デジタルコモディティ」と分類)や、既に成立済みのGENIUS法によるステーブルコイン発行規制などが規制の拠り所となっています。ただし、暗号資産取引所そのものに対する連邦レベルの免許制度は依然として存在せず、これが最大の空白点です。法案提出者のラミス上院議員は採決前、不成立となれば「2026年中は終わり」との見方を示しており、次の機会は年末のレームダック会期か来年の新議会になる見通しです。
情報源: AMINA Group
💡 活用の一言: 取引所向けの連邦免許制度が宙に浮いたままである点は、米国拠点の取引所を利用する投資家にとって中長期的な制度リスクとして意識しておきたいところです。
3. SEC、暗号資産ETFへのオプション上場ルールの判断を11月11日に先送り|標準化基準の中身とは
ナスダックISEが申請した規則変更(SR-ISE-2026-42)は、暗号資産ETFへのオプション上場を個別審査ではなく、一定の基準を満たせば自動的に認める「標準化ルール」の導入を提案するものです。9月27日が45日間の一次審査期限でしたが、この種の申請では審査期間を90日間の正式審理に延長するのが通例で、実質的な判断時期は2026年11月11日ごろにずれ込む見通しです。申請では、対象ファンドの資産の85%が取引可能な先物市場を持つこと、各構成資産の1日あたり平均世界売買代金が7億ドル以上であることの2つの基準が示されており、対象はビットコイン・イーサ・ソラナ・XRP・チェーンリンク・ヘデラの現物ETFに及びます。
情報源: cryptoticker.io
💡 活用の一言: オプション市場が整えばマーケットメーカーのヘッジ手段が増え、現物ETFの売買スプレッド縮小という間接的な恩恵も期待できるため、11月の判断時期はカレンダーに入れておく価値があります。
4. 米決済インフラ大手The Clearing House、トークン化預金基盤にQuantを採用|2027年前半の稼働目指す
RTPやCHIPSなど米国の主要決済ネットワークを運営するThe Clearing Houseは、銀行預金をトークン化してやり取りする「On-Chain Money Initiative」の技術基盤として、ブロックチェーン企業Quant(QNT)を採用したと発表しました。Quantは、トークン化預金の清算・決済を既存のRTP・CHIPSと接続するための相互運用・オーケストレーション層を提供します。トークン化預金は、規制上の保護を保ったまま、あらかじめ設定した条件に応じて自動的に移動する銀行預金のデジタル表現で、決済の即時化・自動化を狙ったものです。同ネットワークは2027年前半に参加金融機関向けに稼働を開始する予定で、現時点で参加銀行名は明らかにされていませんが、規模を問わず金融機関に開放する方針が示されています。
情報源: The Clearing House
💡 活用の一言: 銀行預金のトークン化が既存の基幹決済網と直結される事例であり、ブロックチェーン技術が投機資産にとどまらず企業の決済実務に組み込まれつつある流れとして、自社の決済戦略を考える参考になります。
5. ビットコインにZcash型の「シールド」プライバシー機能を追加する研究論文が発表|ルール変更なしでの実現目指す
暗号技術企業[alloc] initの研究者Clara Shikhelman氏、Mikhail Komarov氏、Aleksei Moskvin氏は2026年9月26日、ビットコインの取引ルールを変更せずにプライバシー機能を追加する「Shielded Bitcoin」構想を56ページの論文にまとめて公表しました。金額・送金者・受取人を秘匿する「ノート」という仕組みで支払いを暗号化し、使用時にはノートが消費された証拠と、新規発行がないことを示す暗号学的証明を公開する設計です。ビットコイン本体はこのデータを記録するだけで検証は行わず、別途の検証用ソフトウェアが正当性チェックを担う点がポイントです。設計はプライバシーコインZcashの秘匿送金の仕組みを参考にしており、Zcashのシールドプール自体、発行済みコインの約29%(490万ZEC)を保有し直近の利用が過去最高水準に達しています。現時点ではあくまで初期研究段階で、入出金の仕組みは別論文に持ち越されているほか、「トラステッドセットアップ」が必要な点、手数料が可視化されてしまう点、通常取引の3〜7倍程度のデータ容量を要する点など課題も多く、導入時期の見通しは立っていません。
情報源: CoinDesk
💡 活用の一言: あくまで初期研究段階の提案であり実装・導入時期は未定であるため、関連銘柄の値動きに過度に反応せず、技術的な実現可能性の検証がどこまで進むかを継続的にウォッチする姿勢が有効です。
まとめ
今回取り上げた5本からは、大きく3つの流れが見えてきます。第一に、暗号資産寄りとされてきたSEC委員の退任とCLARITY法案の不成立が重なり、米国の市場構造規制は法律ではなく各当局の裁量的な運用にますます委ねられつつあること。第二に、規制の不透明感をよそに、ETFのオプション上場基準や銀行預金のトークン化といった「制度・インフラ」面の整備は着実に進んでいること。第三に、ビットコインのプライバシー技術のように、規制論議とは別の軸で技術そのものの進化も続いていることです。
本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘を意図するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
本記事は2026年9月28日時点の情報をもとに作成しています。最新情報は各引用元サイトをご確認ください。


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